イントロダクション
仕事をしていると、思いがけず自分の“心”が鍛えられる瞬間があります。たとえば、会議室での沈黙に耐えながらアイデアを出す瞬間や、トラブル対応で胃が「キューっ」と締めつけられるあの感覚。それは、ただの苦しみではなく、じつは人生の奥深い教科書となるかもしれません。今日は、私が会社員として味わった「キューっ」の経験をひも解きながら、子どもたちの未来へのヒントを探っていきたいと思います。
「キューっ」の正体を解剖する
まず、「キューっ」とは一体何なのでしょう?医学的には何の根拠もないけれど、私の中では一種の“心のアラーム”のような存在です。「ここが踏ん張りどころだぞ!」と、全身にサイレンを鳴らしてくる感覚。そしてできれば来て欲しくない感覚。これは恐怖やプレッシャーといった負の感情から来るもの。若い頃から何度も経験してきましたが、この感覚は決して慣れるものではありません。でも不思議なことに、この感覚があるおかげで20年以上、会社員を続けられているような気もしています。
これが起こる瞬間はさまざまです。たとえば、プレゼンの直前、重要な決断を迫られたとき、あるいは突然トラブルに見舞われたとき。それは、まるで見えないマラソン大会に出場させられているようなもの。しかもゴールがどこにあるか誰も教えてくれない。
子どもたちも同じです。運動会のスタートラインで感じる緊張や、初めてのお泊まり会の前夜に眠れないあの気持ち。発表会や試験前など、「うまくいくのか」「恥をかかないか」という不安は、彼らの日常にも潜んでいます。それは、彼らなりの「キューっ」なのです。もし大人の私たちが「そういうときこそ成長のチャンスだよ」と教えられたら、彼らの心に少しだけ余裕が生まれるかもしれません。
恐怖を超えて現れるプライド
最近気づいたのは、この「キューっ」の質が変わってきていることです。若い頃は「自分が恥をかくのが怖い」という個人戦的な「キューっ」でした。でも今は「うちのチームが批判されるのは許せない」という、より社会的な「キューっ」に進化しています。そのように年齢を重ねると、恐怖だけではなく、そこにプライドという感情が加わります。特に、チームのリーダーとなり、メンバーが非難される場面を見ると、「それは私の責任だ」と感じることがあります。これが「キューっ」となる感覚をさらに強くするのです。これって、親が子供の運動会を見ている時の気持ちに似ているかも。「頑張れ!でも見てるこっちが緊張して死にそう!」という、あの感じです。
子供たちも同じような感情を体験します。例えば、部活で後輩が失敗したとき、責任感を持つのは先輩です。それはプライドの芽生えであり、成長の一歩でもあります。そんな時、「自分も同じ経験をしたよ」と大人が伝えられることで、子供たちは失敗の中に希望を見つけられるのではないでしょうか。
「キューっ」の裏に隠れたもう一つの顔
「キューっ」となる感覚は、決してネガティブなものばかりではありません。それは、“本気”の証明でもあります。「仕事なんて死ぬわけじゃない」という意見もありますが、真剣に取り組むことで得られる学びは計り知れません。仕事でも学校でも、本気で取り組んでいるからこそ、体が緊張を知らせてくれるのです。
この頃、私はこの「キューっ」を歓迎するようになりました。この真剣さが、子供たちにとっても重要な教科書になるのです。例えば、「緊張してもいい、それが本気で向き合っている証拠だから」と伝えることで、子供たちは緊張や不安を敵ではなく、自分の味方と捉えられるようになるかもしれません。「緊張するのは悪いことじゃない。むしろ、それは君が一生懸命だからなんだ」と伝えるだけで、少しだけ肩の力が抜けるかもしれません。
「キューっ」と向き合う耐久力を育てる
「キューっ」となる感覚に食事が喉を通らなくなるほど追い込まれる人もいますが、私はそうならない耐久力を持っているようです。これは、一つの長所で実は私の隠れた才能かも知れません。「適度な不感症」という、会社員にとって最強の特性を持っているのかも。
この耐久力は、経験と時間が育ててくれたものです。仕事を通じて感じる恐怖やプライド。それは、ただのストレスではなく、自分自身を鍛えるためのレッスンなのです。そして、それは私たちが次世代に伝えられる大切な“心の教科書”でもあります。
子供たちも、失敗や挑戦を繰り返しながら少しずつ育てていくことができます。そのためには、私たち大人が「大丈夫だよ、それも経験だ」と優しく見守ることが必要です。
子どもたちが将来どんな「キューっ」に直面しても、「大丈夫、それを乗り越えたら君だけの宝物が手に入るよ」と伝えてあげられる存在でありたい。そう思うのです。
次世代の働く人たちへ
「キューっ」となる感覚、恐怖、そしてプライド。それらは大人の私たちが日々直面するものですが、実はその裏には希望や成長の種が隠れています。この感覚を子どもたちにも伝えることで、未来への大きなヒントとなるはずです。そのような感情は、仕事だけでなく人生全般においての教科書となります。それは子供たちにとっても同じです。また、この感覚と上手く付き合うにはコツがあります。それは、この感覚を「敵」と考えないこと。「キューっ」は少し過敏で心配性だけど、あなたのことを本気で考えてくれている、そんな存在なんです。
今日も何かと「キューっ」となった皆さん、それはきっと素晴らしい成長の最中にいます。その経験はきっと、子どもたちにとっても最高の教科書となるでしょう。
ではまた会いましょう。