完璧な「1」を作る必要なんてない

私たち社会人として長年ビジネスの世界で生きてきて、よく耳にする言葉があります。「ゼロから一を生み出す」という表現です。確かに、スティーブ・ジョブズのような天才たちは、誰も思いつかなかったものを生み出してきました。でも、そんな天才たちでさえ、完全なゼロからものを作り出しているわけではないのです。

実は私たちに必要なのは「1.5」を作る力なんじゃないかと思うのです。完璧な「1」でも「2」でもない、しかもそれを組み合わせても作れる、そのマインドこそイノベーションのタネが隠れているような気がしています。

イーロン・マスクだって実は「1.5屋」さん

「えっ、あのイーロン・マスクが?」と思われるかもしれません。でも考えてみてください。テスラは「車」という1に、「電気」という1を組み合わせて2を作ったわけです。しかもその間に無数の0.1や0.2があったはずです。充電の課題、航続距離の問題、そして価格帯…。彼は完璧な2を一気に作ろうとしたのではなく、1.1、1.2、1.3と少しずつバージョンアップしていったのです。つまり「車」という既存の概念と「電気」という技術の組み合わせを徐々に考えていったのです。iPhoneだって、既存の携帯電話の概念や、タッチパネルなど、様々な技術の革新的な組み合わせでした。UberEatsだって、配達という1と飲食店という1を一旦組み合わせてみて、その間にある「ちょっと良い」「ちょっと便利」という無数の0.1を積み上げていったはず。その組み合わせ方が達人級でクリエイティビティがあり、それを少しずつアップデートしていったのです。

子どもたちに伝えたい「引き出しを増やすこと」の大切さ

では、その「組み合わせの妙」を可能にするためには何が必要なのでしょうか?それは、自分の中にどれだけ多くの「イチ」を持てるか、つまりどれだけの知識や経験をインプットできるかが鍵となります。

私は日々ブログを書いていますが、その中には他者の本や記事、会話から得た影響が少なからず含まれています。それを自分なりに解釈し、表現することで、新しい視点や思考が生まれることもあるのです。このプロセスは、単なる知識の蓄積ではなく、それをいかに消化して新たな形でアウトプットするかが大切なのだと感じています。

さらに、「イチ」を増やすことは何も物事に限りません。人と人との出会いもまた重要なインプットのひとつです。仕事での会話、家族との会話、友人との雑談 – すべてが自分の引き出しを豊かにしてくれます。そして、これらの出会いや関わりの中で、自分に足りない能力を補ってくれる人と巡り会える可能性も広がります。

仕事する中で学んだことの一つは、「初めまして」の場の価値です。正直、私も以前は見知らぬ人との出会いを避けがちでした。でも、そんな場での出会いこそが、新しい視点や考え方をもたらしてくれることに気づいたのです。

これは、子供たちにとっても役立つはずです。たとえば、高校受験を控える子供たちにとって、ただ勉強だけを頑張るのではなく、未知の人たちと出会い、新しい環境で経験を積むことが重要だと伝えたいのです。既存の「仲の良い友達」とだけでなく、新しい友人や環境から学ぶことでしか得られない感情や視点があります。

これは単に勉強や受験だけでなく、将来社会に出たときにも大きな財産となるでしょう。「初めまして」の場に顔を出し、異なるバックグラウンドを持つ人々と交流する力を持つこと。その中で得られるものが、彼らの引き出しをさらに増やし、将来の選択肢を広げてくれるのです。

完璧を目指すよりも組み合わせを楽しもう

私たちの多くは、何かを始める時に「完璧にやらなければ」と思い込みがちです。でも、それは違うのかもしれません。大切なのは、たくさんの引き出しを持ち、それらを自分なりに組み合わせていく力なのです。新規プロジェクトを任されたとき、多くの人は「完璧なプラン」を求めがちです。その際に「とりあえず0.5歩進んでみる」という姿勢と壁にぶつかった時には「組み合わせてみる」が、多くの学びと進化をもたらしてくれます。

これからの時代に必要な力「1.5マインド」

世の中がますますコモディティ化していく中で、これからの時代に必要なのは、既存のものを新しい形で組み合わせる力です。それは決して「パクリ」ではありません。むしろ、創造的な進化の源となるのです。

私たち親世代が実社会で学んだこの気づきは、子どもたちの未来にとっても大きなヒントになるはずです。完璧を目指すのではなく、様々な経験を積み、それらを組み合わせていく。その過程で生まれる独自の視点こそが、これからの時代を生きる力になるのではないでしょうか。

私自身、このブログを書いているときも、読んだ本や出会った人々からの影響を受けています。それらを自分なりに解釈し、新しい形で表現することで、また新たな気づきが生まれる。そんな素晴らしい循環があることを、子どもたちにも知ってもらいたいと思うのです。

結局のところ、人生は完璧な正解を出す試験ではありません。むしろ、様々な「イチ」との出会いとその組み合わせを楽しむ旅なのかもしれません。そう考えると、少し肩の力が抜けませんか?完璧を目指して挫折するより、「まあまあ」を積み重ねていける人。そんな「1.5プレイヤー」こそが、これからの時代を作っていくのではないでしょうか。

私自身、このブログだって「完璧な記事」を目指してはいません。むしろ、「誰かの心にちょっとでも残れば」という1.5的な思いで書いています。人生は、結局のところ0.1ずつの積み重ねですし、今日より明日が0.1よくなれば、それはそれで素晴らしい進化だと思うのです。完璧な1を作れなくても、いいのです。あなたならではの「1.5」を見つけていきましょう。その方が面白いし、何より続けられるので。

ではまた会いましょう。